スラッシュ水素とは?

スラッシュ水素の特徴

技術情報1


 液体水素の密度、 蒸発潜熱は各々水の 1/14、1/5と小さいため、燃料電池や宇宙ロケットの燃料として使用する際、貯蔵タンクの容積が大きくなり、また、輸送、貯蔵時の侵入熱による蒸発損失のため輸送、貯蔵効率が低下する。

 スラッシュ水素は固体粒子による高密度流体、固体粒子の融解熱を利用する機能性熱流体として優れた特性をもっている*。重量固相率 50 wt.%(温度 -259℃、絶対温度 14 K)のスラッシュ水素の場合、上図に示すように、大気圧液体水素と比較すると密度が 15%、気体になるまでの冷却能力(エンタルピー)が 18% 増加する。

 スラッシュ水素を利用すると水素の効率的な輸送、貯蔵が可能になると共に、配管内を流動する際、侵入熱や超伝導線のクエンチ(超電導から常電導状態に転移)による発熱がある場合も熱は固体の融解熱で吸収され、液体の温度上昇と気液二相化が低減される。

水素をスラッシュ水素の形態でパイプライン輸送する場合、下図に示すように、大気圧以上で固相・液相が共存する二相状態のスラッシュ水素を利用することができる。

 スラッシュ流体のもう一つの代表的なものとしてスラッシュ窒素がある。固液二相のスラッシュ窒素(-210℃、絶対温度 63 K)を高温超伝導機器の冷媒として使用する研究もこれまで実施している。重量固相率 50 wt.%の場合、大気圧液体窒素(温度 -196℃、絶対温度 77 K)と比較すると密度が 16%、気体になるまでの冷却能力(エンタルピー)が 22%増加する。

 スラッシュ水素は固体粒子による高密度流体、融解熱を利用する機能性熱流体として優れた特性をもっており、水素を高効率に輸送、貯蔵する手段となる [5-7]。

* ウィキペディア(Wikipedia)に「スラッシュ水素は、水素の三重点における状態である」とあるが、これは誤りである。スラッシュ水素とは固体水素粒子と液体水素が混在する固液二相流体である。スラッシュ窒素も同様である。